単一区画 ”ル・ヴァル・コルネ”を所有する新進気鋭のRM、ナタリー・ファルメ

“ワイン・ガイドのミシュラン”と形容されるフランス最高峰の格付けガイド,『レ・メイユール・ヴァン・ド・フランス』は極めて厳しい格付けで知られている。事実,今や世界的な名声を確立しているマルセル・ラピエールやピエール・パイヤールといったドメーヌでさえ,2011年版で初めて掲載されたのであるから驚きだ。ところが,この『レ・メイユール・ヴァン・ド・フランス 2011年版』において,初めて手がけたワインのリリースからたった1年で格付けを果たした驚異の新鋭ドメーヌがある。それが,シャンパーニュのルーヴル・レ・ヴィーニュ村に本拠を置くナタリー・ファルメだ。

パリ大学で化学を,そしてランス大学で醸造学を修めたナタリー。女性でありながら75にも及ぶRMシャンパーニュの醸造コンサルタントを務め,2000年に家業のドメーヌを継承。2009年秋に初めて自身のシャンパーニュをリリースした新進気鋭のレコルタン。醸造コンサルタントとしてシャンパーニュの本質を熟知したナタリーが手がけるシャンパーニュの特徴は,なんといってもピノ・ノワールを主体とする力強さと,「ヴィノジテ」と表現されるピノ独特の香味にある。しかし,ともするとピノ主体のシャンパーニュで失われがちなフレッシュ感がしっかりと残されていることが,この上なく素晴らしい。

2010年12月にはアメリカにも上陸。3大評価誌すべてにおいて,いきなり90点以上の評価を獲得するという離れ業を成し遂げた。2012年10月にマイアミで行われたフランスワインの国際コンクールで金賞を受賞。また世界で造られるスパークリング・ワインに的を絞った唯一のフランス語の評価誌『ギド・デ・シャンパーニュ・エ・デ・ゾートル・ビュル 2013年版』において,《最も心に残る5本のシャンパーニュ》の1本に選出された。

【歴史】
ナタリー・ファルメは1968年パリ生まれ。パリ11大学で化学を学んだ後,ランス大学で醸造学を修め,その後,シャンパーニュのコート・デ・バール地区のバ・シュール・マルヌ村に醸造コンサルタントのラボラトリーを開設した。以来,現在までおよそ75に及ぶシャンパーニュのレコルタン=マニピュランのコンサルタントを務めている。醸造コンサルタントの仕事と並行し,2000年にはルーヴル・レ・ヴィーニュ村に畑を所有する家業のドメーヌを継承し,自身のワイン造りに乗り出した。家業の継承から9年の歳月をかけ,2009年秋,ついに自身で手がけたシャンパーニュをリリースした。

ドメーヌの畑の栽培面積は3.5ヘクタール。ル・ヴァル・コルネ Le Val Cornetとル・ヴァル・ドロン Le Val Dronの2つの単一区画を所有しており,ピノ・ノワールとピノ・ムニエが1.5ヘクタールずつ,シャルドネが1ヘクタール栽培されている。ブドウの平均樹齢は30-35年。ル・ヴァル・コルネとル・ヴァル・ドロンは隣り合わせのクリマで,どちらも標高は250メートル,南西向きの傾斜25度のなだらかな斜面にある。地質は粘土石灰質土壌で,植樹比率は1ヘクタールあたり9,000本。剪定方法は品種に応じて,シャブリ式,コルドン式,ヴァレ・ド・ラ・マルヌ式。

【栽培】
ブドウ栽培はリュット・レゾネの原則に則って実践。畑の耕運は年2回実施。ブドウ樹に虫がつかないように春に除草を行うため,下草は生やさない方針。施肥にはコンポストと果物の皮を使用している。夏に摘芯を行うが,グリーン・ハーヴェストや除葉は行わない。これは,シャンパーニュでは主流の「偉大な原酒ワインを造るための利点は低収量にはない」という考えに基づく。この点において,シャンパーニュはブルゴーニュなどのスティル・ワインの産地とは収量に対する観念が大きく異なる。また,ドメーヌのブドウ樹は古樹が多いため,ブドウ樹自身で収量が低く制限されるため,人為的な介入が不要ということも理由の1つ。

【醸造】
醸造は,発酵温度を完璧に管理することによってテロワールに由来するあらゆる複雑さと官能的品質を保持することができるため,すべて温度管理機能付きのステンレス・タンクで行っている。ただし,ル・ヴァル・コルネのキュヴェにアッサンブラージュするピノ・ムニエのみは,例外的にバリックで醸造を行っている。ドメーヌが目指しているのは,上品でエレガントで女性的,そして,常に精彩さを持ち続けるシャンパーニュ。また,果実味の質とテロワールが失われないようなアッサンブラージュを行っている。まだ初リリースから2年だが,ナタリー・ファルメのシャンパーニュは,すでにアメリカ,イタリア,ドイツ,ベルギー,ルクセンブルグなどに輸出されている。

【コート・デ・バールについて】
コート・デ・バールは,シャンパーニュの南東に飛び地のように広がる栽培地。白亜質の平原のなかに,谷の集まりによって波状に入り組んだ形になった丘陵が広がっている。オーブの丘陵は,石灰質の台地とキンメリッジ階の泥灰土からなる斜面に形成されている。斜面の泥灰質の土壌は,灰色で石灰質粘土。台地の土壌は硬い石灰岩の上に形成されていて,表土は非常に薄く,溶脱(ようだつ)作用(※)を受けている。

※機械的および溶液の両方の作用によって土壌物質が低い位置に運ばれる作用。浸透する地下水によって,岩石や土壌中の溶解性成分が溶解され除去されること。